本日の手術は、壮年期の先天性眼瞼下垂症の患者様でした。患者様は、幼少期よりまぶたの開きが悪く、医師のご紹介で当院を受診されました。診察すると、両眼ともまぶたが下垂し瞳孔(目の中心の黒目)を覆っている状態で、まぶたを開くための筋肉である眼瞼挙筋がほとんど機能していませんでした。前が見にくいため、常に顎を上げて見る姿勢(chin up position)をとられており、幼少期より長らくそのようにして生活してこられたそうです。その苦労は、われわれ健康人には計り知れないものと思われます。
先天性眼瞼下垂の患者様では、先天的にまぶたを上げる筋肉が弱いため、瞳孔中心から瞼縁までの距離(MRD1)が低い高度下垂の患者様が多くおられます。ただ、年齢とともに、徐々にまぶたが下がってきて、MRD1が3mm以上になると、老人性(加齢性)眼瞼下垂と診断されます。老人性眼瞼下垂では、ある程度、まぶたを上げる筋肉の機能が残っているため、その筋肉を留め直す手術を行うと、綺麗にまぶたが上がり、おおよそ狙った通りに開くことができます。
しかし、先天性眼瞼下垂の方では、挙筋腱膜が薄いため、通常の挙筋前転術では、まぶたを開けることができない場合があります。術前に挙筋機能を測定し、まぶたを開ける力が十分にない方には、挙筋前転術ではなく、筋膜移植やゴアテックスでの吊り上げ術の適応になります。ゴアテックスシートを使用する吊り上げ術も重宝されますが、異物であり感染のリスクもあるため、筋膜移植を行うことが一般的です。筋膜は調整も自由自在で、自然なまぶたの形態を得られます。
筋膜は、大腿の外側より、採取しても歩行機能には何ら影響のない部分を採取します。採取した筋膜をY字型にして、まぶたに移植し、まぶたの皮膚の下にトンネルを作り、眉毛の上に引き出して、まぶたが開くように吊り上げて、額の筋肉に固定します。この、移植した筋膜を、「どこに何ヶ所固定し、どれくらい吊り上げるのか?兎眼(目が閉じない状態)の程度は何mmまでOKか?」などには、やや熟練した経験が必要になります。術後に筋膜が多少収縮することを考慮することも大切です。
本日の患者様は、手術中の調整の段階で、目の前の視界が初めてはっきり見えたことに感動され、涙される一幕もあり、手術後も「人の目を初めてちゃんと見ることができてうれしい」とのお声を頂戴し、私としましても「医者冥利につきる」手術となりました。
まぶたの手術は、「まぶたがしっかり開くこと」「左右対称な開き具合」「美しい魅力ある二重、まぶたの形」「目力」などを全て満たす結果が必要です。
つまり、「見る機能」と「見た目の美しさ」の両方の実現です。
これを実現するために重要なポイントは、
①手術中・手術後にまぶたを「腫れさせない」こと
②そのために「止血を丁寧に行う」こと
③美しいまぶたを「短時間で最低限の手術操作で正確に作る」こと
が重要と考えています(他にも手術デザインや操作上の細かいポイントは満載です😌)。
生まれながらにまぶたが開かない先天性眼瞼下垂の患者様、
年齢とともにまぶたが下がってきた老人性眼瞼下垂の患者様、
埋没法を受けたけど、思ったようにまぶたが開かなかった方、
あきらめず、「もう一度、明るい世の中を、美しい目で見ていただきたい。」
あなたのお悩みを解決し、ご希望を叶えるお手伝いをさせていただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
美容外科・形成外科 パールスキンクリニック天神
院長 山道光作(形成外科専門医・指導医 / 医学博士)